是川銀蔵・・・相場師一代(16)退屈な仕事

是川銀蔵

兵隊になればよい人間に変わるだろうと期待していた銀蔵の両親の期待は兵役に落ちたことで、裏切られた。銀蔵が南方に行きたいと言っているのを知っていた両親は、南方で何をしでかすかわからないと、神戸で貝ボタンの会社をやっていた姉夫婦に相談し、銀蔵にこの会社の運営をやらすことにした。

しぶっていた銀蔵も両親がなんどもいうので仕方なく受けた。この頃、貝ボタンは日本の特産品の一つになっていて、兵庫県の龍野市には貝ボタン製造工場が十数軒並ぶほど輸出は活況だった。「お前が工場をやれば相当業績を上げるのは間違えいない」など持ち上げようとする両親と姉夫婦。経営資金も姉夫婦が出してくれて販売も姉夫婦がやってくれるので、工場運営は楽なものである。

1年が経ち、銀蔵の心にはふつふつと貝ボタンではえられない商売への想いが頭をもたげてきていた。兵庫の片田舎でくすぶるのはやはり性に合わない。大正7年はまさに第一次世界大戦の真っただ中で、日本はロシア革命の干渉でシベリアに出兵を断行していた。戦時色は濃くなり、戦争景気で鉄鋼なども活況となっていた。「次の仕事は鉄鋼関係だな」銀蔵はそう考え始めていた。銅、亜鉛、白金、ニッケルといった非鉄金属不足で相場は暴騰していたからだ。

仕事は番頭にまかしておけば勝手に回る。銀蔵はたいくつしていた。そしてすぐ上の兄に仕事を押し付ける事を思いつく。「工場をそっくりやるから、明日から社長をやってくれ」突然言われた事や両親、親戚の目を気にして最初に断った兄だったが、内心嬉しくて仕方ない事を銀蔵は見抜いていた。「わしと同じようにやれば失敗することはない。世界の需要はますます増えていくから儲かるに決まっている」と最終的に兄に仕事を押し付ける事に銀蔵は成功した。

こうして銀蔵は自由を手に入れ、大阪へと向かうのだった。次回「是川銀蔵・・・相場師一代(17)21歳で従業員260人を使う」乞うご期待! 

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