是川銀蔵・・・相場師一代(12)ピストル交渉

是川銀蔵

「あんたの御返事いかんによっては、ここであんたの命をもらうことになりますよ」銀蔵は一厘銭輸出禁止命令を出した税関長を、ピストルで脅しながらこう言ったのだ。税関長の顔から血の気が引き、ピストルを見た瞬間に椅子から立ち上がり後方に2,3歩後ずさりした。

「き、君、こんな乱暴な事をしちゃ。。。いかんよ。。。」しどろもどろになり、真っ青な顔に冷や汗を浮かべこういう税関長。両手を前に出し、銀蔵を静止しようとするが、銀蔵は静かにこう言い返した。「乱暴じゃありませんよ。冷静に話し合いをするんですよ。まあ、座ってください。」

恐怖でおののく税関長に銀蔵は、いけしゃあしゃあとこう言った。「私らは日本に真ちゅうのインゴットの輸出をしている。それを一厘銭を鋳つぶしているから輸出禁止だとあなたはいうが、我々は中国人の食器の真ちゅうを原料にしているです。だからなんのも法律違反なんてしてません。わたしの工場に来てくれればわかります。是非来てください。」

だが、税関長は来るとは言わない。そもそも何をされるかわからないし、見せるというからには何か手を打っているに違いないからだ。一向に進展しない話し合いに、とうとう銀蔵はピストルに手を掛けて銃口を税関長に向けた。「ギャー!!」と大声を出し、税関長は椅子から転げ落ちてブルブルと震えだした。

「税関長、よく考えて下さい。この青島で日本人は二万人が住んどる。大半の人間がこのインゴットの商売で食えている。あんたはそれを取り上げようとしているんだ。どこの国の為に仕事をしてるんだよ。あんたは我々からしたら国賊だ。場合によってはあんたの命をもらうといったのは、この町の日本人みんなのためだ。心を決めて返事をしてくれよ!」これでとうとう税関長は観念した。「わかりました。私も日本人です。」

こうして後に銀蔵の工場に監査が行われた。もちろん、事前に真ちゅうを集めており、監査は無事に終わり。一理銭インゴットの輸出は再開され、銀蔵は大きな利益を手にいるのである。しかし、いい事ばかりが続かないのが人生。山の後には谷がやってくる。

次回、「是川銀蔵・・・相場師一代(13)三万円寄付のうまい話」乞うご期待!       たなぶ

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