銀蔵は中国・大連に渡ったが、イギリス迄の路銀は無かった。彼が頼ったのが好本商会時代のお得意先、井上商店の井上夫妻だった。井上夫妻は銀蔵を可愛がっており、大連に来たら必ず寄ってほしいと以前から連絡をくれていたからだ。
井上商店は洋服生地問屋で、銀蔵はここで働きながらイギリス行きの方法とお金を稼ぐ事にしたのだ。しかし、大正三年6月28日にサラエボでオーストリア皇太子が暗殺される事件が起こり、第1次世界大戦が勃発する。
銀蔵はヨーロッパ行きどころではなくなってしまった。子供のいない井上夫妻からは、養子になって店を継いでほしいと頼まれる始末。どうしようか悩んでいると、日本軍が大連にやってくる。日英同名の関係から、日本はドイツに宣戦布告。ドイツの極東艦隊の撤退と、当時ドイツが中国から租借していた膠州湾は割譲するよう要求していた。
銀蔵は「こいつだ」とひらめき、日本軍と共に行動し、日本軍の御用商人になろうと考えたのだ。まだ16歳である。当然井上夫妻も大反対だが、銀蔵の意思は固く、進軍する日本軍を追っていくのだった。
だが、16歳の少年に商売をくれるほど軍は甘くはなかった。それはまた、次回!
たなぶ
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