山崎種二は関東大震災に被災し、店も焼けてしまうという経験を独立後にする。火にまかれながら橋桁に手提げ金庫を隠し、脱出して何とか命が助かったという話がある。後に手提げ金庫も見つかるのだが、この関東大震災でいち早く保険金を出して被災者救済に動いたのが東京海上だった。このことが頭に残っていて、後に山種は東京海上の大株主になったと山種は言っている。
この東京海上で、後に山種はツナギ売買を始める。
そもそもツナギ売買とは何か。それは買いのポジションを持ち、売りを立てる行為だ。例えばソフトバンクの株を1000株持っていたとしよう。将来は成長すると見てはいるが、今はあまりに上がりすぎている。基本現物は手放したくない。こんな時に信用取引で売りを立てるのだ。山種は大株主をしつつも、東京海上が人気化するたびに、売り玉を立てて「人気」を売った。
当時は金利も高く売り方には日歩が入る。つまり売り方はお金をもらいつつ下げを待つことが出来た。これも売り方有利な構造だった。ツナギは私もやるので、今後ちょくちょく記事にしたいと思うが、鞘取りと違い思惑を始めるのは簡単ではないので、いきなり始めるのはお勧めしない。
ツナギには保険ツナギという言葉があるように、まさに下落保険の機能がある。というより、そもそも信用取引市場の存在理由は、この保険ツナギが出来るようにする為にあるといっていい。決して信用取引の買いで3倍レバレッジで買うためではない。金融市場の売り機能は、このツナギの為に存在しているという事を知る投資家は少ないのではないか。
山種の自叙伝「そろばん」にこの東京海上のツナギ売買の一戦が書かれている。次回はこれを紹介したい。
たなぶ
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