是川銀蔵・・・相場師一代(18)銀蔵の病魔

是川銀蔵

銀蔵の圧延工場は700度の高温で鉄を溶かしており、工場内は常に乾燥して水をいくらまいても塵埃が立ち込めていたという。工場は24時間稼働していたが生産が追い付かない状況で、銀蔵は朝5時から夜11時まで働いていた。この劣悪な環境で銀蔵は粉骨砕身働いたが、いくら若いといえどもやはり無理が祟った。毎日午後になると38度の熱が出ることから医者にかかると、「肺結核ですね。働きすぎだ、すぐに転地療養しなさい。」といわれた。

すぐに1週間入院した銀蔵はこの入院生活の間「人間の命とは、一体どういうものなのだろうか」という事に興味がわき、妻に大量の医学書を買ってこさせ読んでいたという。こんな時も勉強するのが偉大な相場師の凄いところだ。そして酒や女遊びが健康を害するもっとも大きな要因だと気づいた。もともとそれほど飲めなかった銀蔵はお酒もやめ、社長をしているとありがちな女性の誘惑も断ち切り、食事もそれまでの肉中心から野菜中心に変えることを決心したのだ。何事も健康が一番だと気づいたのだ。

三週間後に医者が驚くほど銀蔵は回復していて、「酒も飲んどらんのだろ」と医者も認める生活改善だった。銀蔵はこれがダメなものだったら絶対にやらないという意思の強さがあったら、その後の相場にも立ち向かえたと書いている。やはり、相場には意志の強さが必要だ。そしてこの後、銀蔵に、日本に大きな試練がやってくる。大正十二年九月一日、あの関東大震災がやってくるのだ。そこでも銀蔵は商魂たくましく働くことになる。

次回、「是川銀蔵・・・相場師一代(19)関東大震災とトタン板」乞うご期待!

たなぶ

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