是川銀蔵・・・相場師一代(11)一厘銭輸出禁止

是川銀蔵

最初は銀蔵だけがやっていた一厘銭商売だったが、あまりにもぼろい商売なのですぐに多くの人間が真似し始めた。中国の法律では貨幣の改鋳・売買・運搬は死刑という重罪だったが、日本字は治外法権に守られているから出来るこの一厘銭商売だったが、毎日のようにインゴットが日本に輸出されているのを見ている青島の税関から通報があり、最終的に日本政府に連絡が行く。「中国の法律に違反しているので止めて欲しい」。

日本政府からも指摘が来たため、青島の税関長は「一厘銭輸出禁止」を発表した。当時青島にいた日本人2万人の半分はこの一厘銭商売に関わっており、すぐにパニックに陥った。急に飯の種を奪われたのだから、みんな途方に暮れたという。当時一厘銭組合というのが出来ており、何度も代表が税関長に掛け合ったが、「日本政府の指示でやっている。文句があれば日本政府に要請した清朝政府に言ってくれ」といって、相手にしてくれない。

この税関長は日本の大蔵省からやってきており、日本の10倍の給料をもらい、使用人5~6人の庭付き豪邸に住んでいるが、青島の日本人がどんな生活をしておるかなど見に行ったこともない。本国の顔色ばかり見ている小役人だった。一厘銭組合の年長者たちは毎日会議をしているが、何の解決策も出すことは出来なかった。当時18歳の銀蔵はこの大人たちの体たらくにもイライラさせられていた。

銀蔵は本当の年齢を言ったことがなく、まわりの大人たちは銀蔵が未成年だなんて思ってはいなかった。組合員の銀蔵はこう切り出した。「何の対策も無いのだったら、交渉委員を私にして任してもらえんでしょうか。」未成年とは知らないものの、まだ若い銀蔵に「ちゃんと交渉できるのか」「どんな交渉するつもりなんだ」と質問してくる大人たち。

だが銀蔵は「あんた達はなんも解決できなかったじゃないか、やり方は俺にまかしてくれ」と交渉内容は言わずに押し通した。銀蔵は交渉員に任命されたが、若すぎるという事で50代の大人が付き添いでつけられた。だが、銀蔵は一人で交渉するつもりだった。税関長には会えたが「なんだ若造か。。。」そんな顔をする税関長。そんな税関長に銀蔵は啖呵を切った。

銀蔵はドスの利いた声でこういった。「今日は私が組合の代表としてきました。覚悟してください。場合によっては税関長の命を貰わなくてはなりません。」そういって銀蔵は懐からピストルを取り出し、税関長の机の上に置くのだった。

銀蔵の交渉の結果は如何に!ではまた!    たなぶ

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