是川銀蔵・相場師一代(30)・・・第2次世界大戦を予想する

是川銀蔵

銀蔵は米国、英国、ソ連、中国、オランダといった国の予算を調べてあることに気づく。それは不必要と思える予算が急激に膨張しているのだ。例えばソ連の予算ではシベリア開発費とインド農業界蓮予算が例年に比べて急激に膨張していた。予算を増やせばそれなりに動きがあるはずだが、そのようなものもない。「これはおかしい。第一シベリアの寒冷地農業開発がそんなに急に進められるはずはない」と銀蔵は読んだ。

さらにソ連は極東の軍事力を膨張させ、常備兵力を30万から60万に倍増させていた。しかも日露戦争の敗因の一つとなったシベリア鉄道の単線による補給力を改善すべく、複線化を進めているこのも分かった。イギリスについても造船会社の経営などを調べ、戦艦の受注が数多くの民間造船所が受注していることが分かった。つまり平和役な項目の予算にはなってるが、実際には軍事増強を行っていたのだ。銀蔵は米・英・ソ・中・蘭の日本包囲網による戦争が近いと確信したのだ。

「日本はもはや、米・英との戦争は不可避となった。緊急に戦時体制を整え、軍事生産力を増強させなくてはならない。」銀蔵は財界や軍参謀本部に訴えた。ところが当時の日本は、日米親善を外交の基本政策としており、銀蔵の話に耳を傾けてくれる人は少なかった。そんな中、陸軍きっての経済通といわれた沼田多稼蔵少将から、話を聞きたいと連絡があった。

「是川さん、米英との戦争不可避というのは、どういう所から調べられたのか、資料があれば軍に提出してくれ」というので、銀蔵は資料を出して説明もした。「うかうかしていたら、米英は対日臨戦態勢をあっというまに調えてしまいますよ。」沼田少将は経済通だけに銀蔵の説明を聞き「う~ん」と絶句し、事態の深刻さを理解した。銀蔵は「最大の弱点は鉄です。米英ソの年化鉄鋼生産は合計1億数千万トンなのに対し、我が日本は600万トンしかない。いそいでせめて1千万トンの生産量は不可避です。」こうして銀蔵は軍の主戦派の顧問のようになっていくのである。

鉄が足らないと分析した銀蔵だったが、ただ分析して危機を喧伝するだけではなかった。彼はなんと挑戦に渡り、製鉄会社を企業すのだった。次回「是川銀蔵・相場師一代(31)・・・朝鮮での鉱山開発・製鉄所設立」乞うご期待!

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