銀蔵は中国人が相手にしてくれないので、一計を講じた。炊事場でやることもなくうろうろしている暇な兵隊たちがいた。銀蔵はこの兵隊たち3名にタバコを一箱ずつ配り「すまんけど、一緒に中国人の村に一緒にいってくれませんか」と頼んだ。
車に銃剣付きの兵隊を3名載せて村に行くと、日本兵が来た!と驚いて村人は蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。銀蔵たちは村の品物を車に積み込む。このまま持っていくとただの泥棒になるので、銀蔵はその場で商品の計算をして、代金を置いていったのだ。
もちろん、村人が陰からこちらを見ているのは計算していた。代金も村人にとって損ではない金額だった。お金を渡したことで、村人は銀蔵がちゃんと取引してくれることを理解し、また兵隊を連れてくることも出来る事もわかり、まともな扱いになった。
その後は兵隊を連れていく必要もなく、何度か目の取引が終わると資金も溜まり、軍からお金を借りなくても商売ができるようになった。必要物資を前線に送る仕事も引き受け、銀蔵の仕事は大きくなっていく。中国人も雇い、物資の運搬業も引き受けてなんと馬車百台を確保するほどになったのである。
そんな中、日本軍は大正三年十一月七日、ドイツの直轄地青島に総攻撃をかけるのだった。
銀蔵の商売はどうなる? それはまた次回! たなぶ
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